
看護職の倫理綱領を知っていますか?

看護師の大切な考え方よね。

臨床での看護はもちろん、看護学生等のレポートにも活用できます。

最近改訂されたのよね。
詳しく教えてほしいわ!
看護職の倫理綱領は、看護の大きな目的である「その人らしく人生を全うできるようその人のもつ力に働きかけながら支援する」ことを達成するために知っておくべき指針です。
2021年には倫理綱領が改訂され、より現状に合った内容へと変更になっています。
変更点も含めて理解しておきましょう!
- 看護倫理とは?
- 倫理綱領前文と16項目を解説!
- 前文
- 倫理綱領①人間の生命、人間としての尊厳および権利を尊重する
- 倫理綱領②平等に看護を提供する
- 倫理綱領③信頼関係を築き、その信頼関係に基づいて看護を提供する
- 倫理綱領④権利を尊重し、人々が自らの移行や価値観にそった選択ができるよう支援する
- 倫理綱領⑤秘密を保持し、取得した個人情報は適切に取り扱う
- 倫理綱領⑥不利益や危害が生じているときは、人々を保護し安全を確保する
- 倫理綱領⑦自分の責任と能力を的確に把握し、実施した看護について個人としての責任をもつ
- 倫理綱領⑧常に、個人の責任として継続学習による能力の開発・維持・向上に努める
- 倫理綱領⑨多職種で協働し、よりよい保健・医療・福祉を実現する
- 倫理綱領⑩より質の高い看護を行うために、自らの職務に関する行動基準を設定し、それに基づき行動する
- 倫理綱領⑪研究や実践を通して、専門的知識・技術の創造と開発に努め、看護学の発展に寄与する
- 倫理綱領⑫より質の高い看護を行うため、看護職自身のウェルビーイングの向上に努める
- 倫理綱領⑬常に品位を保持し、看護職に対する社会の人々の信頼を高めるよう努める
- 倫理綱領⑭人々の生命と健康をまもるため、さまざまな問題について、社会正義の考え方をもって社会と責任を共有する
- 倫理綱領⑮専門職組織に所属し、看護の質を高めるための活動に参画し、よりよい社会づくりに貢献する
- 倫理綱領⑯様々な災害支援の担い手と協働し、災害によって影響を受けたすべての人々の生命、健康、生活をまもることに最善を尽くす
- 看護職の倫理綱領2021年改訂 主な変更点
- 看護倫理のレポートを書くコツ
- まとめ
看護倫理とは?

倫理とは、ものごとの善悪や正しさを判断するための基準・根拠となるもの。
看護倫理とは、看護職が職務上意識するべき倫理・モラルのこと。
看護倫理は、次の2つの倫理原則を土台としています。
- 医療倫理学に基づいた4つの原則
- 医療専門職の義務・規則の基礎となる2つの原則
これらの原則を守り、看護職が倫理的に正しい判断をするための行動指針として、看護職の倫理綱領(16項目)が設定されています。
また、患者さんや家族、医療者のすべてが同じ意見・意向をもち、治療・療養を進められるとスムーズですが、実際の医療現場では全員の足並みが揃うことはそれほど多くありません。
実際の医療現場では、治療方針の決定をスムーズに進めるために、より実践的なアプローチである「臨床倫理の4分割法」という方法が頻繁に活用されています。
医療倫理学に基づいた4つの原則
自立尊重原則 | 実際の医療現場において、情報提供や疑問・不安の解決を通し、患者さんが自分自身の意思を決定することを尊重する。 |
善行原則 | 所属する組織や医療関係者に利益がある決定をするのではなく、患者さんの利益につながる行動をする。 |
無危害原則 | 転倒によるケガの予防など、患者さんに危害がおよぶリスクを最小限にできるよう十分に注意を払う。 |
正義原則 | 災害医療用機器や集中治療室の設備などといった医療資源を、提供可能な人数の範囲内で公平・平等に提供する。 |
医療専門職の義務・規則の基礎となる2つの原則
誠実の原則 | 「嘘をつく」「情報をごまかす」「人をだます」など、信頼を損ねる行動をしない。 |
忠誠の原則 | 約束や秘密を守る。 |

この6つの原則は、本当に大切な原則です。
患者さんと医療従事者の両方の立場から何が最適が考えるときにぜひ、振り返ってみてください!
倫理綱領前文と16項目を解説!
看護の倫理原則をもとにしている日本看護協会の「看護職の倫理綱領」は、看護職が業務を行う上で、倫理的に正しい判断・行動をするための基準を16項目にまとめたものです。
では、看護職の倫理綱領にはどのような内容がまとめられているのでしょうか。
ここでは、看護職の倫理綱領の前文と16項目をわかりやすく解説します。
原文はこちら▶看護職の倫理綱領
前文
前文は、「人々は、人間としての尊厳を保持し、健康で幸福であることを願っている。」という一文から始まっています。
人が求めることはさまざまですが、根本は健康と幸福ですね。
その人の健康と幸福を支えることが看護といえます。
倫理綱領①人間の生命、人間としての尊厳および権利を尊重する
倫理綱領①は「人間としての尊厳及び権利を尊重する」です。
倫理綱領②平等に看護を提供する
倫理綱領②は「平等に看護を提供する」です。
倫理綱領③信頼関係を築き、その信頼関係に基づいて看護を提供する
倫理綱領③は「信頼関係を築き、その信頼関係に基づいて看護を提供する」です。
倫理綱領④権利を尊重し、人々が自らの移行や価値観にそった選択ができるよう支援する
倫理綱領④は「権利を尊重し、人々が自らの移行や価値観にそった選択ができるよう支援する」です。
倫理綱領⑤秘密を保持し、取得した個人情報は適切に取り扱う
倫理綱領⑤は「秘密を保持し、取得した個人情報は適切に取り扱う」です。
倫理綱領⑥不利益や危害が生じているときは、人々を保護し安全を確保する
倫理綱⑥は「不利益や危害が生じているときは、人々を保護し安全を確保する」です。
倫理綱領⑦自分の責任と能力を的確に把握し、実施した看護について個人としての責任をもつ
倫理綱領⑦は「自分の責任と能力を的確に把握し、実施した看護について個人としての責任をもつ」です。
倫理綱領⑧常に、個人の責任として継続学習による能力の開発・維持・向上に努める
倫理綱領⑧は「常に、個人の責任として継続学習による能力の開発・維持・向上に努める」です。
倫理綱領⑨多職種で協働し、よりよい保健・医療・福祉を実現する
倫理綱領⑨は「多職種で協働し、よりよい保健・医療・福祉を実現する」です。
倫理綱領⑩より質の高い看護を行うために、自らの職務に関する行動基準を設定し、それに基づき行動する
倫理綱領⑩は「より質の高い看護を行うために、自らの職務に関する行動基準を設定し、それに基づき行動する」です。
倫理綱領⑪研究や実践を通して、専門的知識・技術の創造と開発に努め、看護学の発展に寄与する
倫理綱領⑪は「研究や実践を通して、専門的知識・技術の創造と開発に努め、看護学の発展に寄与する」です。
倫理綱領⑫より質の高い看護を行うため、看護職自身のウェルビーイングの向上に努める
倫理綱領⑫は「より質の高い看護を行うため、看護職自身のウェルビーイングの向上に努める」です。
倫理綱領⑬常に品位を保持し、看護職に対する社会の人々の信頼を高めるよう努める
倫理綱領⑬は「常に品位を保持し、看護職に対する社会の人々の信頼を高めるよう努める」です。
倫理綱領⑭人々の生命と健康をまもるため、さまざまな問題について、社会正義の考え方をもって社会と責任を共有する
倫理綱領⑭は「人々の生命と健康をまもるため、さまざまな問題について、社会正義の考え方をもって社会と責任を共有する」です。
倫理綱領⑮専門職組織に所属し、看護の質を高めるための活動に参画し、よりよい社会づくりに貢献する
倫理綱領⑮は「専門職組織に所属し、看護の質を高めるための活動に参画し、よりよい社会づくりに貢献する」です。
倫理綱領⑯様々な災害支援の担い手と協働し、災害によって影響を受けたすべての人々の生命、健康、生活をまもることに最善を尽くす
倫理綱領⑯は「様々な災害支援の担い手と協働し、災害によって影響を受けたすべての人々の生命、健康、生活をまもることに最善を尽くす」です。
看護職の倫理綱領2021年改訂 主な変更点
看護職の倫理綱領は2021年に改訂版がリリースされています。
主な変更点を1点抜粋します。
改訂内容はいくつかありますので、詳しくはこちらを参考にしてください。
看護者から看護職へ
看護職の倫理綱領の全てにおいて、「看護者」から「看護職」へ変更されています。
- 「看護者」は、看護職の免許の有無を問わず、看護をする人を広く指す場合が多いとしている
- 「看護職」は、保健師・助産師・看護師・准看護師のいずれかもしくは複数の資格を持ち、看護の職務を担当する個人(者)をいうとしている
上記を踏まえて、看護職の倫理綱領では、資格をもった者を対象としていることから「看護職」としています。
看護倫理のレポートを書くコツ

看護倫理に関連したレポートを作成する際には、次のような流れで書くとスムーズに作成することができます。
簡単な例とともにポイントを押さえていきましょう。
看護倫理のレポートを作成する際の4つのポイント
では、看護学生だけではなく、すでに看護職として働いている方にも役立つ看護倫理のレポートのポイントを紹介します。
1.看護倫理のどのようなポイントに着眼して記述するか、簡単に紹介する
例:人間の尊厳(倫理綱領第1項)と身体の拘束 など
2.そのポイントを深く考えるきっかけとなった事例を挙げる
例:認知症患者さんや知的障害をもつ患者さんについて身体拘束を行うことがあるが、身体拘束は人間としての尊厳を損ねる行為であるとともに、身体機能の低下や寝たきりといった状況につながりかねない。
3.看護倫理上の観点から、どのような看護を目指すとよいか、考えたことを述べる
例:転倒・転落を防ぐための身体拘束であれば、他の対策がとれないか検討する。治療の際に患者さんが暴れる場合には、信頼関係を築けるよう、1つ1つのケアについて丁寧に説明し、安心感をもってもらえるようにする。
4.自身が看護師となったときの試みや目標を記述する(レポートで扱った看護倫理上のポイントに関連した内容にする)
例:安易な身体拘束に走らず、その他の対応策がないか自分自身できちんと考えた上で、治療の関係者と協議した上で、患者さんの人間としての尊厳を最期まで大切にする看護を行いたい。
まとめ
内容を読んでみると、「看護ってこういうものなんだな」とか「いいこと書いてるな~」と感じますね。
個人的には、看護職の倫理綱領を目指して努めていきたいと思ってはいますが、現実には難しいです。
病院(組織)も看護職も本質は、患者さんと同じように尊厳や幸福などのニーズがある人間です。
患者さんだけでなく、自分たちも大切にしたいという思いもありますから、どうしても患者さんファーストにはできない場面もあるでしょう。

私は、いろんな看護職がいていいと思います。

ただし、最低限の倫理は守って、看護職の倫理綱領を基盤にしていけるといいね!
今までの経験を活かせる職場を見つけましょう!
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