
心不全診療ガイドライン2022年版がでていますね。

どこが変わったの?

改訂のポイントを解説しますね。

解説お願いします!
本記事では、9年ぶりに全面改訂された「心不全診療ガイドライン2022年版」(2022 AHA/ACC/HFSA Guideline for the Management of Heart Failure)の改定ポイントを解説します。
心不全診療ガイドライン2022年版
第71回米国心臓病学会学術集会(ACC.22、会期:4月2~4日、ワシントンDCの会場とウェブのハイブリッド開催)に合わせ、米国心臓病学会、米国心臓協会(AHA)、米国心不全学会の共同編集による「心不全診療ガイドライン2022年版」(2022 AHA/ACC/HFSA Guideline for the Management of Heart Failure)が発表されました。
米国の心不全診療ガイドラインは2017年に部分改訂されていましたが、全面改訂されるのは2013年版以来で9年ぶりとなります。

改訂の内容を知って心不全治療のトピックを学びましょう!
心不全診療ガイドライン2022年版改定の概要
症候性心不全を発症していないステージA~Bの段階での、心不全の発症予防を目的とした介入の強化、心不全の薬物治療体系へのSGLT2阻害薬の組み込み、心アミロイドーシスや腫瘍循環器領域への言及、合併症の項の充実など改訂点は多岐にわたります。
心不全の定義に関して、左室駆出率(EF)が41~49%の区分の名称を、「heart failure with mildly reduced ejection fraction」(HFmrEF)としました。
2013年版では「heart failure with preserved ejection fraction, borderline」との名称になっています。
ステージA

ステージAは、高血圧や糖尿病など心不全発症の危険因子がある段階と定義されます。
高血圧の管理や生活習慣の改善に関する従来の推奨に加え、「2型糖尿病で心血管疾患の既往があるか心血管疾患のリスクが高い患者へのSGLT2阻害薬投与」がクラス1(強く勧められる)の推奨として新設されました。

SGLT2阻害薬といえば「フォシーガ」ですね。
フォシーガは、SGLT2(ナトリウム-グルコース共輸送体2)を阻害する薬剤。
腎臓の近位尿細管付近でグルコースやナトリウムの再吸収に関わっています。
腎臓を介した作用、血管への作用、心臓への直接的な作用によって心不全への効果をもたらすと言われています。
ステージB

ステージBは、器質的心疾患はあるが心不全の症状はまだない段階です。
EFや心血管疾患の既往に応じてACE阻害薬、スタチン、β遮断薬などをクラス1で推奨したほか、心筋梗塞から40日以上経過した患者でGDMT(診療ガイドラインに基づく標準的治療)を行ってもEFが30%以下の場合、心不全症状がなくてもICD植え込み術を行うことをクラス1の推奨としました。
またEFが50%以下の症例に対するチアゾリジン系薬の投与を、有害であり投与すべきではないとしています(クラス3)。
ステージC(HFrEF)

症候性心不全となるステージCでは、NYHA心機能分類2~3度のHFrEF(EFの低下した心不全、EF 40%以下)に対するサクビトリルバルサルタン(ARNI、エンレスト錠)の投与をクラス1の推奨とし、ARNIが適さない場合はACE阻害薬を投与するとしました。
エンレストはHFrEF患者8442人を対象とした海外臨床第3相(P3)試験「PARADIGM-HF試験」で、ACE阻害薬エナラプリルに比べて心血管死と心不全による初回入院からなる複合エンドポイントのリスクを20%抑制した報告されています。
β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は引き続きクラス1の推奨とし、症状が持続するHFrEFに対するSGLT2阻害薬の投与をクラス1で推奨しました。
イバブラシン(クラス2a、勧められる)、ベルイシグアト(同2b、考慮できる)、ジゴキシン(同2b)などは、GDMTを十分行った上での追加治療薬としています。
ステージCのHFrEFに対するデバイス治療では、高度房室ブロックないし完全房室ブロックでEFが36~50%にある症例に対する心臓再同期療法(CRT)が、クラス2aで推奨されました。
ステージC(HFpEF)

ステージCでHFpEF(EFの保たれた心不全、EF 50%以上)に対しては、SGLT2阻害薬がクラス2aの推奨で新設され、症状や心筋虚血がある冠動脈疾患を合併した患者に対する再灌流療法の推奨がなくなり、MRA、ARB、ARNIがクラス2bの推奨になりました。
心アミロイドーシス
心アミロイドーシスの診断基準に以下の3点が推奨されています。
治療に関しては、NYHA1~3度の心不全症状がある野生型ないし変異型トランスサイレチンアミロイドーシスに対するタファミジスの投与がクラス1で、心房細動を合併する心アミロイドーシスに対する抗凝固療法がクラス2aで推奨されました。
まとめ

心不全診療ガイドライン2022改定ポイントを解説しました。

処方されるお薬もどんどん変わっていくのね。

ガイドラインを知っていると、治療をよく理解できますよ。

臨床での経験とガイドラインを結びつけて勉強すると身につきやすそうね。
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